
太宰治生誕110周年の2019年。小栗旬主演の映画「人間失格 太宰治と3人の女たち」が公開しました。豪華なキャスト陣に圧倒されることなく、太宰治本人の人生とその魅力が改めて人々を惹きつけています。
名作“斜陽”の中で「人間は恋と革命のために生まれてきたのだ」と記した太宰治。そのタイトルが付けられた「斜陽館」は青森県の金木町に存在し、今も尚強烈な印象を与える太宰の魅力を伝えています。
そんな彼の生家である「斜陽館」を、太宰と同じ青森県出身の筆者がローカル目線で紹介します。「見どころ・太宰が愛した津軽の味・おすすめの周辺観光」まで幅広くご覧ください。
太宰のふるさと「斜陽館」までのアクセスと駐車場情報をご紹介
青森県五所川原市に位置する斜陽館は、津軽鉄道「金木駅」から徒歩約7分の場所です。赤い屋根が特徴の豪邸で、どっしりとした重厚感のある建築物からは、太宰の裕福さを目にすることができます。
車・電車・徒歩でのアクセス
津軽鉄道金木駅 ⇒ 斜陽館 | 徒歩7分 |
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青森空港 ⇒ 斜陽館 | 普通車で1時間10分 |
JR青森駅 ⇒ 斜陽館 | 普通車で斜陽館まで1時間10分 |
浪岡I.C ⇒ 斜陽館 | 普通車で40分 |
※浪岡I.Cのルートは五所川原北I.Cを経由し、浪岡I.C(東北自動車道)から津軽自動車道(自動車専用道路)です
最寄り駅の金木駅(津軽鉄道)から斜陽館への行き方
太宰治記念館「斜陽館」専用駐車場
無料駐車場は斜陽館に隣接し、通常50台収容可能で大変便利です。最終入館は閉館30分前までとなるので注意してください。
住所 | 青森県五所川原市金木町朝日山412-1 |
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料金 | 無料 |
駐車台数 | 50台 |
周辺には専用駐車場以外の駐車スペースがありません。イベント時は混雑も予想されるため、事前のお問い合わせをおすすめします。無料ですが予約は受けていません。
太宰治記念館「斜陽館」の混雑予想
観光バスの出入りが頻繁にあり、混み合うことがあるので注意してください。混雑で入場不可ということはないですが、「斜陽館」向かい側の専用駐車場は満車になることも。
ゴールデンウィークなどの連休、桜祭りなどのイベント時は混み合うことが予想されます。
連絡先 | 太宰ミュージアム運営委員会 |
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所在地 | 青森県五所川原市金木町朝日山412-1 |
営業日・休業日 | 12月29日 |
開館時間 | 4~9月/9:00~17:30(最終入館17:00)、10~3月/9:00~17:00(最終入館16:30) |
電話番号 | 0173-53-2020 |
FAX番号 | 0173-53-2055 |
入場料・入園料 | 一般500円 高・大学生300円 小・中学生200円 |
禁煙・喫煙 | 完全禁煙 |
施設・店舗 | 「斜陽館」正面金木観光物産展「マディニー」にて太宰ゆかりの郷土料理の食べられるレストラン・グッズ有 |
ホームページ | 公式ページはこちら |
- 【ミュージアムショップ】「斜陽館」向かい側の金木観光物産展「マディニー」にて購入可能
- 【通販で買える斜陽館関連グッズ】金木観光物産館「マディニー」のオンラインショップにて購入可能。地元の特産品や限定グッズもあるのでファンは必見です
- 【バリアフリーに関して】車いす用トイレが一か所あるのみ。エレベーター、スロープ、音声ガイドなどはないので注意してください
- 【小さいお子様連れの方】ベビーカーの持ち込みや授乳室、おむつ替えスペースなどベビー対応は一切ありません。見どころも多いので抱っこ紐は必須です
斜陽館の中を紹介していきます!

津軽平野のほぼ中央に位し、人口五、六千の、これという特徴もないが、
どこやら都会風にちょっと気取った町である。善く言えば、水のように淡白であり、
悪く言えば、底の浅い見栄坊の町という事になっているようである。
そんな少し都会風に気取った町にある太宰治の生家「斜陽館」を紹介します。
太宰治が生まれ育った家は、「和洋折衷・入母屋造り」の建物で米蔵にいたるまで青森ヒバ材が使用されています。1階2階に19室を設け、付属建物や泉水を配した庭園など合わせて680坪の豪邸です。
太宰は「この父はひどく大きな家を建てた。風情も何もないただ大きいのである」と表しています。※太宰が生まれる2年前の明治40年6月に建てています

戦後に津島家が家を手放してからは、旅館「斜陽館」として長く使われていましたが、平成8年に旧金木町(現在の五所川原市)が買い取っています。
その後、現在の「太宰治記念館(斜陽館)」として一般公開されることとなりました。近代和風建築の代表例として2004年(平成16年)国の重要文化財に指定されています。
館内の様々な箇所に「太宰作品を表すストーリー」がちりばめられており、幼少期の太宰に出会える貴重な空間です。夕方には、太宰の香りがする屋敷に差し込む「斜陽」を目にすることができます。
太宰についてもっと知りたい!「斜陽館」の見どころ
太宰の生家で彼の人生について想いを馳せてみると、 「豪奢すぎる館内と彼の作品とのギャップ」が見るものに孤独を感じさせてくれます。
かつては「旅館」として多くのファンを迎えた斜陽館

太宰が38歳の時、自身の誕生日に入水自殺をしました。遺体となって発見された6月19日は今官一(※)により桜桃忌と名付けられ、今でも多くのファンによる法事が行われています。
※今官一(こん かんいち)は太宰治と親交があった直木賞作家
昭和25年から金木町の観光名所となっていましたが、平成8年3月に旧金木町が買い取り、現在の記念館となりました。
当時の斜陽館は喫茶店も併設されていたとのことです。喫茶店で太宰に思いを馳せながら憩うひとときは、ファンにとってはたまらない時間だったことでしょう。
おすすめの周辺観光ルートと所要時間

太宰の幼少期にもっと深く迫るなら、「斜陽館」だけでなく「旧津島家新座敷」へ訪れてみてはいかがでしょう。「旧津島家新座敷」は、太宰が1945年7月に家族と共に疎開し、一年四ヶ月を過ごした場所です。
コアなファンの間では“裏・斜陽館”と呼ばれるほど彼の人生を語るには外せない場所。太宰治が文壇に登場してから暮らした居宅としては、唯一現存する貴重な邸宅です。

その存在はほとんど知られていませんでしたが、2007年(平成19年)に私設ミュージアムとして開館されたのです。太宰は、この屋敷の書斎で23作品を生み出しています。
『パンドラの匣』『庭』『親といふ二字』『嘘』『貨幣』『やんぬる哉』『津軽地方とチェホフ』『チャンス』『海』『雀』、最初の戯曲『冬の花火』、第二戯曲『春の枯葉』など
「ほっとして涙が出るよ」
「ここで書いた作品を読み返したい」
「タイムスリップしたよう」
「作家の息遣いや体温が感じられる特別な場所」
「太宰がそこにいるようだった」
出典:太宰治疎開の家「公式HP」
まるで太宰の息遣いが聞こえてきそうなその書斎は、今もファンに何かを訴え続けているようです。そんな「旧津島家新座敷」を含めた観光ルートの紹介をしていきます。
【1】太宰治ゆかりの地巡り<2時間コース>
【2】歴史的建造物巡り<2時間コース>
太宰作品に表れるユーモア溢れるエピソード
太宰はよく鬱々としたイメージでとらえられることが多いですが、実は大違い。筆者の出身地である青森県民がよく言われる「皮肉屋でユーモラス」な一面を持ったチャーミングな文豪でした。
「生まれてすみません」というあまりにも潔い暗さにも、ある意味彼なりの滑稽さを含めていたのではないかと思ってしまいます。ここでは、そんな太宰の人間味あふれるエピソードを紹介していきます。
「太宰作品に興味がない」というあなたもきっと1冊手に取ってみたくなることでしょう!
太宰治と酒
短編『禁酒の心』にあるように太宰は酒もよく飲んだといいます。体に悪いと言われると「酒を飲まなければ、クスリをのむことになるが、いいか」と弁解したそうです。
#太宰治 のポーズを再現した#小栗旬=太宰の写真が解禁❗️
⠀⠀
現在も経営している「銀座・ルパン」で撮影された太宰本人の写真とまさに同じ場所&ポーズで #蜷川実花 監督が撮りおろし📸
指先から爪先まで完璧に再現している小栗さん、さすがです…✨
⠀⠀#映画人間失格 pic.twitter.com/QJS6YWkBLZ— 映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』 (@NSmovie2019) 2019年7月1日
酒が入ると陽気になり歌を歌うほどで、この度の映画化で小栗旬も完全コピーしたあの酒場でのポーズはあまりにも有名ですよね。
小栗は役作りのため、常に酒を飲むよう心がけていたというほど。太宰のけだるい独特な雰囲気は酒の影響もあったのでしょうか。
生涯止められなかったアノ調味料
太宰はなんと味の素が大好きでした。
私は、筋子《すじこ》に味の素の雪きらきら降らせ、納豆《なっとう》に、青のり、と、からし、添えて在れば、他には何も不足なかった。
出典:太宰ミュージアム
小説「HUMANLOST」(昭和12年)には上のように記されています。また、「鮭缶を丼に開け、味の素を大量にふりかけて食べた」という話も有名です。
この作品は、昭和11年10月からの闘病生活で書いたものですが、太宰の大食漢ぶりは周りを驚かせるほど。ガツガツと食べるその姿は、見る人を悲しい思いにさせたとも言われています。
貪欲なまでの食への執着は、「太宰の生きることへの執着」とも言えるのかもしれません。太宰のお墓には、今でも味の素がお供えされています。
警察署の帰りがてら近くの太宰治のお墓 へお参りしてきました。おおっお供えものが塩?カニ缶?帰ってから調べると塩に見えたのは味の素!太宰は何にでもまぶしてしまうほどの味の素好きだったそうですよ。ちなみに斜め後ろは森鴎外! pic.twitter.com/sPYHao0Yln
— 滑川道広 (@michironame) 2016年8月2日
どうしても芥川賞が欲しかった太宰
芥川賞と呼ばれる賞は、純文学の無名もしくは新人作家に与えられる新人賞でした。この賞が出来たばかりのころ、太宰は真っ先にこの賞が欲しくて固執したといいます。
しかし、候補にはあがったものの惜しくも落選。選考委員の川端康成にこう批評されました。「作者目下の生活に厭な雲ありて、才能の素直に発せざる憾みあった」
つまり“太宰は作品云々の前に人間性に問題あり”といったところでしょうか。ショックを受けた太宰は、川端康成を批判した文章「川端康成へ」を『文藝通信』10月号に発表します。
作者目下の生活に厭な雲ありて、云々。”事実、私は憤怒に燃えた。(中略)刺す。そうも思った。大悪党だと思った。
出典:青空文庫
“刺す”“大悪党”など、これでもかとばかり反撃していました。
しかし当時の太宰は、女性との心中騒動や鎮痛剤として使用したパビナール中毒など、厭な雲がありました。
川端の指摘が図星だったことから、ただ逆切れしたように見えてしまうかもしれません。
その一面、素直な姿も見せました。太宰が選考委員の佐藤春夫に宛てた手紙が新たに見つかったのです。「第二回芥川賞は僕に下さい」といった素直に懇願するもので、親しくなるために自宅にも通い詰めたといわれています。
しかし、二回目は候補にすら上がることなく落選・・・
そこで太宰は、第三回目は逃すまいと、長さ4メートルに及ぶ芥川賞懇願の書簡を“大悪党”とまで称した川端に送ります。ここまで切望しましたが、結局その思いが叶うことはありませんでした。
ただ、“芥川賞”だけが新人賞ではありません。直木賞など他にも有名な純文学の新人賞は存在します。そして、かの有名な村上春樹も芥川賞を逃してきました。
この太宰の「芥川賞事件」があったからこそ、芥川賞を有名にさせ、価値が高まっているといっても過言ではありません。
太宰の愛した津軽の味を味わえるおすすめランチ
子供の頃の自分にとって、最も苦痛な時刻は、実に、自分の家の食事の時間でした。
出典:青空文庫
「人間失格」の中でこう記していますが、実際の太宰はよく食べ、よく飲む人でした。高校時代はいつも3倍分の味噌汁を魔法瓶に入れて登校していたそうです。
美知子夫人は、自身の回想録で「太宰の好きな食材(納豆筋子・湯豆腐・毛ガニ・根曲がり竹の子など)を集めるために三鷹の町を毎日奔走した」と記しています。
そんな太宰こだわりの味を楽しめるスポットの紹介をします。金木町まで行けない方も青森市内で楽しめます。
【金木町】太宰治の好物がたくさん「太宰治御膳」

太宰の食へのこだわりを存分に堪能したいのならこちらをどうぞ!太宰がこだわった地場の食材はもちろんのこと、切り方や味付けなど細部までこだわっています。
ただし、こちらは要予約制です。3日前までにご連絡お願いします。(太宰らうめんと郷土料理「はな」:0173-54-1155)
『太宰治御膳』1,950円(税込)
【金木町】太宰らうめん

太宰は金木に帰るとき「若竹汁」を楽しみにいていたそうです。それをアレンジしたのがこの太宰らうめん。歯触りがよく、甘みのある竹の子がたっぷり入った特別な一杯をお試しあれ!こちらは事前予約不要です。
『太宰らうめん』750円(税込)
【金木町】青森シャモロック親子丼

金木名物といえば青森シャモロック。うま味がたっぷりのキュッと身が締まった新鮮な地鶏を一杯当たり100gとふんだんに使用しました。
『青森シャモロック親子丼』950円(税込)
ふんわり仕上げた半熟卵とじで召し上がれます。こちらはテレビや新聞で紹介されているようです。1日限定15食なので、どうしても!という方は事前にお電話でご確認を。
「太宰治御膳・太宰らうめん・青森シャモロック親子丼」は「金木観光物産館マディニー」にあるレストラン「太宰らうめんと郷土料理はな」で味わえます!
太宰らうめんと郷土料理「はな」の基本情報
店名 | 太宰らうめんと郷土料理「はな」 |
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所在地 | 青森県五所川原市金木町朝日山195-2 |
営業日・休業日 | 年中無休 |
営業時間 | 11:00~16:00(ラストオーダー 15:30) |
電話番号 | 0173-54-1160 |
FAX番号 | 0173-54-1156 |
禁煙・喫煙 | 館内全面禁煙 |
施設・店舗 | 最大160名までの団体メニューあり |
【新青森駅】太宰丼
新幹線の玄関口「新青森駅」では、太宰ゆかりの味を楽しめる津軽料理のお店「太宰らうめんと津軽のめしや・めぇ」があります。※JR新青森駅構内「旬味館」
お土産スペースは混雑することもありますが、レストランと少し離れた場所にあるので、お土産を求める客と一緒になることはありません。
こちらのお店では、太宰の好物であった太宰丼が食べられます。実は青森が発祥といわれる“ひきわり納豆”に醤油がわりに筋子を混ぜ込んだ意外すぎる組み合わせ!

醤油のしょっぱさが筋子に代わることで、少しマイルドになり、ちょっとクセになりそうです。上の写真をご提供いただいたかわむらさんも、「ご飯をいくらでも食べられそう」というコメントをされていました。
太宰らうめんと津軽のめしや・めぇの基本情報
店名 | 太宰らうめんと津軽のめしや・めぇ |
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所在地 | 青森市大字石江字高間140-2(新青森駅1階) |
営業日・休業日 | 年中無休 |
営業時間 | 9:00~21:00(LO 20:30) |
電話番号 | 017-752-6038 |
禁煙・喫煙 | 館内全面禁煙 |
「斜陽館」で太宰治の魅力に迫るなら生誕110周年の今がおすすめ!
金木町では110周年を祝して“太宰治フェスティバル”と呼ばれる斜陽館のライトアップや朗読会など、イベントが多数行われています。
せっかくなら地元のイベント情報をチェックしてみてはいかがでしょうか。イベント内容は地元金木ならでは!というものが多く、太宰作品に登場する「料理・お酒・アート」を再現して、太宰を感じながら楽しめる趣向が凝られています。
また、金木町は津軽三味線発祥の地でもあるため、館内で津軽三味線を楽しめるイベントもあります。斜陽館でのイベントは、見どころ満載で語り尽くせません。米蔵では「太宰治が好んだお酒を振舞った」というのだからファンにはたまりませんよね。