末期癌患者で余命宣告された人にかける言葉・してあげられること【体験談】

  • 2019年11月20日
  • 2019年11月24日
  • Life
末期癌患者で余命宣告された人にかける言葉

あなたの大事な人が余命宣告されたとき、どんな言葉をかけてあげますか?

伝えたい言葉はあるけど、「傷つけてしまうのでは・・・」そんなふうに思ってしまうかもしれません。

両親の終末期、私はそんな状況でした。

いざ自分の大事な人が「末期癌」と宣告された場合、私たちはどのような言葉をかけ、どのような援助をしていけばいいのでしょうか。よかれと思って放った言葉が傷つけてしまうこともあります。

今回は私の実体験に監修者(介護士)のご意見も含め、末期癌と宣告された親へ「かけてよかった言葉・避けたほうがよかった言葉」、「してあげられること」についてお話しします。

末期癌患者の両親に私が伝えた言葉

私は「一緒に頑張るということ」「心配事について安心させてあげる」言葉を伝えました。

母は一人暮らしで突然入院してしまったこともあり、今後のことや家のことを心配することが多かったです。

これらは“不安”からくることなので、それを取り除くにはどうしたらいいのか?そこを考えたときに以下のような言葉を伝えていきました。

伝えた言葉
  • お金の事は心配しなくていいよ
  • 遠慮なく頼っていんだからね
  • 家に残してきたメダカのお世話はしているから大丈夫だよ
  • 掃除や洗濯はやっているから安心して
  • 明日もくるよ。今はゆっくり休んで

自分の親が癌になった時、心の拠り所は家族であると言っても過言ではありません。末期癌を宣告された方の中には、自暴自棄になり、あらゆる治療を拒否してしまう方もいます。

そんなときの「家族や身近な人の言葉」は安心感を生んでいたように感じます。そして「大丈夫」「頑張って」など、責任を持てない言葉はけっして伝えませんでした。

次はいつお見舞いに行くかを伝える

病室で過ごす日々は孤独なものです。できるだけ顔を出し「また来るから」「すぐ顔を出すから」と安心させてあげましょう。

病院にひとりでいると「物事を悪い方向」へ考えてしまう可能性があります。会話中は、関係のない世間話を振るのもいいでしょう(癌のことを少しでも忘れてもらうため)。

両親が癌になったとき、両親の友人が頻繁にお見舞いに来てくれました。私が行けない日でも何人もの方が入れ替わりで来てくれたので、息子としてありがたく思っていました。

伝えるだけではなく患者の声に耳を傾ける

末期癌患者で余命宣告された人にかける言葉
家族であっても、親の痛みや苦しみをすべてわかるわけではありません。

「こうした方がいいよ」と、相手の気持ちを決めつけてしまわないようにしてください。命令のような言葉は「威圧感」を与えてしまいます。

会話したそうな雰囲気だったら、親の方から話し出すのを待ってあげましょう。弱音や愚痴が飛び出すこともあるかもしれませんが、受け止めてあげてください。

相手の心に寄り添う聞き方というものがあります。
(参考:高齢者の語りに寄り添う(PDF)

まず、きちんと目を見ること。 そして、「そうだね」「わかるよ」と肯定的な相槌をうってあげることです。 気の利いたことが言えなかったとしても、これだけで「相手が聞いてくれているのだ」と安心できるのです。

できるだけ 「明日を迎えるのが楽しみになるような声かけ」をしていきましょう。

「明日は好きな食べ物を持ってくるよ」
「今度あそこに行ってみよう」
「好きな本を買ってくるよ」
など、喜びそうなことを伝えてください。

楽しみなことがあると、人は思考が前向きになります。辛い治療を少しでも緩和できるようにしてあげてください。

身近な人の話をしよう

なんらかの理由があって「顔が出せない家族・親戚」がいる場合は、その家族の近況報告をしてあげてください。入院をしていると、外部の情報がまったく入ってこなくなります。病院では医療の話が主になってしまい、気が滅入る方も少なくありません。

会えない家族とは自分が積極的に交流を図り、情報共有をしていきましょう。そして病室にいる親には、外の家族の話をして繋がりを持たせてあげてください。

「今あの人は何をしているのか」
「どんな仕事をしてどんな生活をしているのか」

などを教えてあげてください。写真がある場合は見せることもおすすめします。アルバムにして病室に置いておくのもいいでしょう。

提案もしてあげてください

「今度会いに行こう」「また新しい写真を持ってこようか」など、こちらから提案すると喜んでくれるはずです。家族以外の話しでも問題ありません。

私の場合は「自分自身のこと・友人のこと」、とにかく母が知っている人の話しをしました。「友人の○○が今度結婚する~、転職して今度違う仕事する~」
昔から知っている人の話をすると喜んでくれました。

避けるべき言葉は無責任に頑張ってと励ますこと

末期癌患者で余命宣告された人にかける言葉
“頑張ってね”という一方的な励ましの言葉は、時に相手を傷つけてしまう場合があります。

一体何を頑張ればいいのか・・・
無責任な言葉は、本人だけではなく患者の家族まで傷つけてしまいます。

どうせ伝えるなら「頑張って」ではなく、「一緒に頑張ろう」ということが伝わればよいと思います。手を差し伸べてあげられるような言葉をかけていきましょう。

癌患者の心はとても傷つきやすい状態です。後ろ向きな言葉を言ったとしても、それを否定することや反論してしまうことは適切ではありません。

自分に余裕がなくなると、相手に思いやりが持てなくなります。まずは自分に余裕を持って対応していきましょう。

親を責めないようにしてください

もっとも言ってはいけない言葉は、「あんな生活をしていたから病気になったのだ!」と、親の生き方そのものを否定してしまうことです。

ぜったい言わないだろうと思っていても、介護で忙しくなってくると相手を責めてしまう場合があります。家族は一番の味方であり、理解者であるべきです。敵になってはいけません。

言葉で責めなくても、無意識のうちに態度で責め立てている場合もあります。
「親の前でため息をつく」
「眉間にシワを寄せる」
「不機嫌な態度をとる」
など、ちょっとした言動や雰囲気を敏感に反応します。

自分がツラい状況であったとしても、親はもっと辛く苦しいのです。病気の治療に専念してもらうためにも、余計な心配をかけることのないようにしましょう。

癌の医療的ケアを行うのは医師や看護師ですが、精神的ケアを行うのは家族です。最期の一日まで穏やかに過ごしてもらえるよう、慎重に言葉を選んでください。

親が亡くなるまでに伝えてほしい言葉

あなたが生まれてから無償で愛し続けてくれた親に「ありがとう」と伝えてください。

私は照れくさくて、なかなか伝えられませんでした。それを伝えられたのは母が亡くなる最後のときです。あと数分で亡くなってしまう・・・そのときになってようやく「生んでくれてありがとう。」と伝えられました。

もしこの言葉を伝えられなかったら・・・
きっと今でも後悔していたと思います。あなた自身が後悔しないためにも、伝えておくべきことは必ず伝えておきましょう。

末期癌患者にしてあげられること

末期癌患者で余命宣告された人にかける言葉
診断された直後は取り乱してしまうこともあると思います。
しかし、支えるはずの家族がパニックになってしまったら、診断された本人は余計に不安になってしまいます。まずは落ち着いて病状を受け止めることが大切です。

医師や看護師の助言を受けながら、まずはこの後のことを考えていきましょう。そして、癌という病気について、家族も理解をしておくことが大切です。

末期癌の場合、身体に負担のかかる治療を続けるのではなく、QOLを上げる治療を優先させる選択肢もあります。QOLとはクオリティオブライフの略で、「生活の質」といった意味があります。

接し方を変えない

末期癌患者で余命宣告された人にかける言葉
末期癌の宣告を受けると、家族は必要以上に気遣いをしてしまう場合があります。
しかし、本人にとっては逆効果になってしまうことも・・・

「自分はもう長くない」「こんなに家族に心配をかけて申し訳ない」など、本人が自分を責めてしまうことが考えられます。

まずは、いつも通りの声かけや態度を心がけてください。そして、本人の望むことを聞き出してあげることが大切です。私たちも悲しい気持ちや悔しい気持ちなど、さまざまな感情が入り乱れてしまうと思います。

ただ、自分の気持ちを押し付けてしまうことは、患者本人にとって負担になってしまいます。本人も敏感な状態になっているので、いつも通りの生活で安心させてあげることが大切です。

本人の望むことをさせてあげる

末期癌患者で余命宣告された人にかける言葉
自分らしい生活を送らせてあげられるよう、できるだけ望みを聞いてあげてください。医師や看護師には相談しにくいことでも、家族になら話せることがたくさんあります。

福祉用語の中に「傾聴」という言葉があり、相手の立場に立って耳を傾けてあげることをいいます。「今何を望んでいるのか?」できるかぎり聞いてあげてください。

「行きたい場所・やってみたいこと・食べたいもの・会いたい人」など、望むことは人それぞれです。それが医療と関係があることだった場合、医師に相談する必要がありますが、家族でも叶えてあげられることはたくさんあります。

私の場合は、母が好きだった食事を可能なかぎり用意し、育てていた花やメダカのことを気にしていたので、写真や動画を見せてあげてました。

在宅治療という選択

QOLを重視する治療の場合、在宅で治療を続けるという選択肢もあります。病院ではなく、「慣れ親しんだ自宅で治療を行いたい」と思う方も少なくありません。

もちろん医師や医療機関との連携が必要になり、家族のサポートも増えていきます。車椅子を使用する場合は移動介助が必要になり、在宅酸素などの管理が必要になってくる場合もあるでしょう。

基本的に24時間見守り体制になり、身体的にも精神的にも辛い状態になることも考えられますが、本人が在宅を望んでいるなら、その希望を叶えてあげる必要があるのではないでしょうか。

自宅での治療や介護に不安がある場合は、看護師や介護士に指導を受けたり助言をもらってください。1番やりやすい方法を教えてくれるはずです。まずは「家族がどういった治療を望んでいるのか?」を確認し、医師と相談していきましょう。

延命措置の意思確認

末期癌患者で余命宣告された人にかける言葉

「本人と意思疎通が図れるうちに」様々な話をしておかなくてはなりません。
例えば、「延命措置をするのか・しないのか」ということです。本人の意思が確認できなくなってしまった場合、その決定権は家族にゆだねられます。

患者によっては、延命措置をしない選択もあるでしょう。そう言われた時、家族は「悩み・葛藤」すると思います。延命措置をしないという選択をしても、いざそうなった場合「もっと生きて欲しい」と願ってしまうでしょう。

しかし、ムリに延命をして苦しい思いをするなら、自然にいきたいと思う本人の希望を無視しないでください。本人の決めたことを受け止めてあげるのも、家族のすべきことです。

このことを忘れずに、本人らしい生活が送れるようなケアをしてあげてください。結果論になりますが、私の父は「延命措置」をして、長く苦しい生活を送ることになってしまいました。

家族の意思は尊重されますが、「延命措置」をしない治療方針の病院もあります。

実際に選択のときがきたら悩んでしまうと思いますが、「延命措置」はどちらが「良い・悪い」という問題ではなく「家族の選択の問題」です。この選択結果に0点も100点もありません。

自分自身も後悔しないために

末期癌患者で余命宣告された人にかける言葉
家族が末期癌と宣告されてしまった時、その現実を受け止めるのに時間がかかると思います。

しかし時間は待ってくれません。後でこうすればよかったと思っても、それを実行することはできないのです。

わからないことがあるなら、医師や看護師に納得いくまで聞いてみてください。書籍やインターネットで調べてください。その中で後悔しないやり方を見つけることができるのは、他の誰でもなく私たち自身です。

今は癌患者のケアを行っている医療機関もあります。家族だけで解決できないことがあるなら相談していきましょう。そして末期癌になった家族とは可能なかぎり会い、話をしてください。あなたとの時間はそれほど残されていません。

どれだけ会って話しをしても、そのときがきたら「もっと話したいことがあった」「もっとこうしてあげれば良かった」と思ってしまいます。

あなたの大事な人(末期癌患者)に「してあげられること」は“残された時間を共有すること”ではないでしょうか。