「君の名は。」はここから生まれた!?「雲のむこう、約束の場所」のあらすじ・ラストを徹底解説

雲のむこう、約束の場所
(C)2004「雲のむこう、約束の場所」製作委員会

2016年の「君の名は。」で日本歴代興行収入ランキング第2位の大ヒットを記録し、一躍国民的アニメ監督となった新海誠監督。

今回紹介する「雲のむこう、約束の場所」は、新海誠監督の衝撃のデビュー作「ほしのこえ」から2年が経過した、2004年11月20日に劇場公開されました。

新海監督の2作目となる「雲のむこう、約束の場所」は、デビュー作「ほしのこえ」が約30分の短編アニメーション映画であるのに対し、長編アニメーション映画になっています。

それでは映画「雲のむこう、約束の場所」について、ネタバレを含みつつ紹介していきます。

映画のテーマ・新海誠監督の作品の特徴

雲のむこう、約束の場所
(C)2004「雲のむこう、約束の場所」製作委員会

「あの雲の向こうには、彼女との約束の場所があった。」

「あの遠い日に僕たちは、かなえられない約束をした」

本作が公開された2004年当時は、アニメ評論家が「新世紀エヴァンゲリオン」など「自分の将来と世界の行く末がリンクする」物語を、「セカイ系」というワードで定義づけていました。

新海誠監督の作品も「セカイ系」アニメであり、本作は戦後日本のあり得た歴史。
冷戦体制が続いている設定と、中学~高校までの主人公たちの青春物語がリンクした内容に仕上がっています。

本作品の背景

「監督・脚本・演出・作画・美術・編集」など、ほぼすべての制作作業を1人でこなしたデビュー作と異なり、他のアニメ製作者とともに制作をしたはじめての映画作品です。

本作は、第59回毎日映画コンクールアニメーション映画賞、第36回星雲賞アート部門など5つの映画・アニメの賞を受賞。
この後の新海誠監督の作品テーマを決定づけた作品と言えます。

ネタバレなしのあらすじとネタバレありのストーリーを紹介!

本章では、ネタバレなしのあらすじとネタバレありのストーリーを紹介します。

まだ観ていない方は、最初のネタバレなしの部分だけご覧ください。

「雲のむこう、約束の場所」のあらすじ

雲のむこう、約束の場所
(C)2004「雲のむこう、約束の場所」製作委員会

1996年、冷戦体制が存続している世界―――。

世界は南北に分断されており、日本も共産国家群「ユニオン」に統治されている「蝦夷(エゾ)」と、アメリカに統治されている「本州以南の日本」に分断されていました。

中学3年生のヒロキとタクヤは、今の世界を支える「巨大な塔」を見るため、ヴェラシーラという飛行機を2人で作っています。

偶然ながら、憧れの同級生サユリに2人の計画を教えることになり、秘密を共有した彼らは親しい間柄となりました。

しかし、夏休みのある日。

突然サユリがいなくなってしまい、ヴェラシーラの飛行計画もやめることになって、3年後―――。

サユリに対するそれぞれの想いを抱えながら、タクヤは地元の高校に進学し、富澤室長の戦時下特殊情報処理研究室に外部研究員として参加していました。

ヒロキは、鬱屈した気持ちを抱えながら、今までのことを忘れるために東京の高校に進学します。

そんな中、中学3年生の時にアルバイトをしていた軍需工場である蝦夷製作所の社長岡部が不穏な動きをし始めたのです。

タクヤとヒロキは中学3年生の時の夢である「巨大な塔」にまた関わることになっていきます。

それぞれの思惑を抱きながら、また彼らはヴェラシーラを飛ばそうと決意して…。

「雲のむこう、約束の場所」ネタバレあり!のストーリーを紹介

雲のむこう、約束の場所
(C)2004「雲のむこう、約束の場所」製作委員会

この章ではネタバレありのストーリーを紹介していくので、知りたくない方は注意してください。

1996年と1999年のストーリーを説明し、ストーリーを解明するためのポイントについて分析していきます。

1996年のストーリー

雲のむこう、約束の場所
(C)2004「雲のむこう、約束の場所」製作委員会

1996年のストーリーは、世界観・登場人物を説明するためのものと言えます。

第二次世界大戦が終了した後、日本はドイツと同様南北に分断され、北海道は「蝦夷(えぞ)」として、共産国家群である「ユニオン」に占領されていました。

「ユニオン」には、東京からも見ることができる「巨大な塔」がそびえたっています。
北海道以外はアメリカ軍の統治下にあるという、血なまぐさい戦争のにおいがする戦後日本。

青森の中学校に通うヒロキとタクヤは、「巨大な塔」を近くで見るために2年前から自分たちで飛行機を作っています。

そして、その夢をかなえるために、2人は地元の軍需工場である蝦夷製作所でアルバイトをして、飛行機を完成させようとしていました。

2人に興味を持った、2人の憧れの存在である同級生サユリは、2人の夢に共感をし、ヒロキ・タクヤと夏休みを一緒に過ごすことになります。

楽しく、淡い青春を過ごしていた彼らだが、サユリが忽然と姿を消しました。

行方が分からなくなったサユリについて一切情報がないまま、ヒロキとタクヤは飛行機への夢も無くしてしまい、飛行機づくりは中断されるに至ります。

1999年のストーリー

雲のむこう、約束の場所
(C)2004「雲のむこう、約束の場所」製作委員会

あれから3年が経った1999年。
サユリの失踪をきっかけに、すべてを忘れようとしていたヒロキは、東京の高校に進学をしました。

地元の誰とも交流をせず、ただただ昔を忘れようと努力していましたが、サユリのことを忘れることができないままでいます。

一方タクヤは、地元の高校に進学し、バイト先の所長・岡部の紹介で、米NASA属託の青森アーミーカレッジ・戦時下特殊情報処理研究室の外部研究員として参加しており、才能を発揮していました。

その研究所では「塔」の研究をしており、「塔」の一機能である「平行宇宙」の観測と、そこへの接続を試みる実験をしていたのでした。

失踪をしたと考えられていたサユリは、実は原因不明の病で3年間昏睡状態に陥っていることを富澤が突き止めます。

そして、サユリが「塔」のカギを握っていることも…。
1999年は「ユニオン」と「日米連合」に一触即発の空気が流れている時代になっていました。

そんな中、アメリカが「ユニオン」に宣戦を布告し、津軽海峡で戦争が勃発。

ヒロキとタクヤがバイトをしていた蝦夷製作所の所長・岡部は、実は反ユニオンの組織「ウィルタ解放戦線」というテロ組織のリーダーであり、南北統一のため活動していました。

岡部は「塔」を破壊するための「PL外殻爆弾」を極秘裏に入手し、「塔」を破壊しようと工作をはじめ、岡部の旧友である富澤の研究所に参加していたタクヤもテロ活動に身を投じます。

それぞれの事情が絡まる中、3年前から同じ夢ばかりを見続けていたヒロキは、サユリも同様の夢を見ており、そこで意識を共有していることに気づきます。

サユリを助けるために地元・青森へと旅立つヒロキ。

「ウィルタ解放戦線」に参加していたタクヤは、ヒロキの甘っちょろい夢物語を一度はバカにするものの、「塔」を破壊するための「PL外殻爆弾」をヒロキに託します。

サユリを病院から連れ出したヒロキは、タクヤとサユリとの夢である飛行機「ヴェラシーラ」にサユリと「PL外殻爆弾」を乗せて、「塔」へと飛び立っていきました。

【考察】ストーリーを解明するためのポイント!「塔」は何のために存在しているのか?

雲のむこう、約束の場所
(C)2004「雲のむこう、約束の場所」製作委員会

「塔」の役割については2つの見方が存在しています。

一つは、富澤が研究している内容で、宇宙がそれ自身生み出していると考えられている「平行宇宙」を観測しているというもの。

映画では、同研究所でタクヤと共に働いている笠原が平行宇宙について「宇宙が見る夢」という説明をしています。

物理学的な理論で定説となっている「パラレルワールド」という考え方が、本作の世界観の前提として、可視化された状態で提出されています。

現代物理学に親しみがない、あるいはその考え方になじめない人には難解です。

もう一つは、テロリストである岡部が採用している内容で、「平行宇宙」の観測は表向きの役割であり、裏ではアメリカ等に対抗するための軍事兵器として利用されているというもの。

「平行宇宙」の観測に付随して、未来予測が可能であるシステムとして機能する「塔」は、アメリカ側の軍事行動も予測することが可能となります。

そうなれば、日本は「ユニオン」の占領下に置かれることは間違いありません。
これに対抗しようとしているのが、南北統一を掲げるテロ集団「ウィルタ解放戦線」なのです。

サユリの昏睡状態の理由は?

雲のむこう、約束の場所
(C)2004「雲のむこう、約束の場所」製作委員会

冒頭で「セカイ系」アニメの説明をしましたが、サユリは実は「平行宇宙が地球を飲み込まないための防波堤として存在していた」というのが、本作が「セカイ系」である証拠です。

「平行宇宙」は、空間に入ると、その世界を飲み込んでしまいます。

すでに「塔」の周囲半径数キロメートルの空間が、「平行宇宙」の暗闇に侵食されており、世界は「平行宇宙」に飲み込まれる危険にさらされていました。

しかし、それが世界へと累を及ぼさないのは、サユリのおかげなのです。
サユリは、「塔」から流れてくる「平行宇宙」の情報を自分の脳内に取り込んでいました。

これは、塔の設計者であり、サユリの祖父であるエクスン・ツキノエが設計したプログラムなのです。

一人の人間の脳では処理しきれないほどの「平行宇宙」の情報がサユリの脳内に流れ込んでくるため、起きていることが不可能な状態にサユリは陥っていたのです。

衝撃のラスト!その意味について

雲のむこう、約束の場所
(C)2004「雲のむこう、約束の場所」製作委員会

「平行宇宙」に飲み込まれる危険性を持っている世界を救うため、「ウィルタ解放戦線」は「塔」を破壊しようと目論見ます。

ヒロキは、サユリを単純に目覚めさせるため、サユリを乗せて「ヴェラシーラ」を飛ばそうとしました。

もしサユリが目覚めれば、「平行宇宙」が空間にあふれてきて、世界は崩壊してしまいます。
世界を崩壊させたくない富澤はサユリを眠り続けさせたい。

サユリとの約束を叶えたいヒロキはサユリを目覚めさせたい。
2人の立場が分かるタクヤは悩んだ末、ヒロキの「約束」を後押しします。

ヴェラシーラに乗り込んだヒロキとサユリ。
ユニオンからの攻撃をくぐり抜け、「塔」へと近づいたヴェラシーラ。

すると、サユリ目覚めます。
瞬間、蝦夷は「平行宇宙」の位相変化により、飲み込まれていきます。

しかし、ヒロキの発射した「PL外殻爆弾」を積んだミサイルが塔を破壊することで、流出は食い止められました。

サユリの「大切な記憶」を奪って…。
おそらく2012年の日本。

戦争は終結し、南北統一は実現されています。
31才になったヒロキが、青森に戻っていましたが、隣にはサユリの姿はありません。

「約束をなくした世界で、それでも、これから僕たちは生き始める」

「雲のむこう、約束の場所」の声優(キャスト)一覧

役名声優
藤沢浩紀(ふじさわひろき)吉岡秀隆(よしおかひでたか)
白川拓也(しらかわたくや)萩原聖人(はぎわらまさと)
沢渡佐由理(さわたりさゆり)南里侑香(なんりゆうか)
岡部(おかべ)石塚運昇(いしづかうんしょう)
富澤常夫(とみさわつねお)井上和彦(いのうえかずひこ)
笠原真希(かさはらまき)水野理紗(みずのりさ)
有坂(ありさか)木内秀信(きうちひでのぶ)
水野理佳(みずのりか)中川里江(なかがわりえ)

「雲のむこう、約束の場所」の監督・音楽・スタッフ一覧

原作・脚本・監督・音響監督新海誠
キャラクターデザイン・総作画監督田澤潮
美術丹治匠、新海誠
音楽天門
主題歌川嶋あい
アフレコ演出三ツ矢雄二
制作・配給コミックス・ウェーブ
ホームページ公式ページ

主題歌(川嶋あい)は「きみのこえ」

主題歌(きみのこえ)は歌手の川嶋あいさんが担当しています。

「きみのこえ きみのかたち 照らした光
かなうなら 僕のこえ どこかのきみ とどくように 僕は生きてく」

というサビの部分が「本作のテーマ」であり、ラストの意味を補い、エンドロールに悲しく響きます。

「雲のむこう、約束の場所」の聖地巡礼!ロケ地は青森県

「雲のむこう、約束の場所」の聖地は青森県!津軽半島が主な舞台です。

駅名は「青森駅・蟹田駅・今別駅・三厩駅・竜飛崎」が聖地となっており、この周辺も舞台となっています。

「津軽線の電車内」「外ヶ浜警察署前の交差点」「階段国道R339」もロケ地として使われています。
津軽線の電車は、人が少ないことも多いので撮影しやすいスポットです。

東北がロケ地となるアニメは少ないので、是非行ってみてください。
現実の世界観を緻密に描かれている新海ワールドですが、同映画でも同じように楽しむことができます。

「雲のむこう、約束の場所」のまとめ

雲のむこう、約束の場所
(C)2004「雲のむこう、約束の場所」製作委員会

新海監督の2作目とあってか、近年の作品に比べてキャラクターデザインは絵の雑さが目立ちました。

そして、設定自体にSF感が強く、ロボットモノや戦争モノが好きな方には面白く見える作品かもしれません。

しかしアクションの要素は、「ウィルタ解放戦線」の工作活動の場面と、「塔」にヴェラシーラが飛んでいく場面以外はなく、そちらの方面でも期待は裏切れるでしょう。

物語の設定上難しいところもありますが、昏睡状態に陥っているサユリとヒロキの対話は、夢空間のようなもので行われており、彼らの対話は対話でありながら、それぞれを想うポエムのようなものになってしまっています。

「雲のむこう、約束の場所」の評価

雲のむこう、約束の場所
(C)2004「雲のむこう、約束の場所」製作委員会

「君の名は。」「天使の子」で新海監督の作品を知った人たちにとって、おそらく本作はあまり面白い作品ではないでしょう。

理由は、戦後日本の歴史のif設定や「パラレルワールド」の説明など、本作が前提としている世界観の説明場面が多く、主人公たちの物語があまり詳細に語られないからです。

そして、新海誠監督作品の特徴とも言える「ポエムのようなモノローグ」が、物語の進行に決定的な役割を見せます。

しかし「君の名は。」に比べると、主人公たちの対話よりも、それぞれの人物が話すモノローグの方が中心となっていて、「対話で物語が進行する」という感じがしません。

音楽が天門の担当となり、物語の展開上大きな役割を担っているが、「登場人物たちのセリフが聞こえないまま」音楽が流れるという場面が多数存在し、さらに上記の要素が増幅される結果になっています。

こういった部分は近年のヒット作とは異なるものであり、「天気の子」などで感じられた新海ワールドを期待すると、少し違和感を感じる結果となってしまうかもしれません。