新海誠監督作品デビュー作!「ほしのこえ」のあらすじ・ラストを徹底解説!

ほしのこえ
(C) 新海誠 / Comix Wave

「千と千尋の神隠し」が日本歴代興行収入の記録を塗りかえ、300億円の興行収入を記録した翌年の2002年。

ある無名のアニメ監督が衝撃的なデビューを飾りました。
それが新海誠監督です。

今や大御所監督といった感じの新海誠監督ですが、デビュー作「ほしのこえ」は、当時の日本人の常識から外れた作品でした。

今回は映画「ほしのこえ」の考察を交えながら「あらすじ(ネタバレ)」「声優」などを紹介していきます。

新海誠監督のデビュー作「ほしのこえ」は多数の映画賞を受賞!

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(C) 新海誠 / Comix Wave

「ほしのこえ」の公開日は2002年の2月2日。
2が並ぶ記念すべきこの日に、短編映画専門の映画館「下北沢トリウッド」でひっそりと上映されます。

上映時間は25分。
他の短編アニメ映画と変わらないかと思われましたが、大違いでした。

本作は、新海誠が「監督・脚本・映像・制作」を一人で担当したことが話題となり、ミニシアター系であったにもかかわらず、ヒットを記録したフル・デジタル・アニメーション映画なのです。

そして、第6回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門の特別賞、第34回星雲賞では、「映画演劇部門・メディア部門・アート部門」の3部門を受賞し、計8つの映画賞を受賞しました。

映画のテーマ

ほしのこえ
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「私たちは、たぶん、宇宙と地上にひきさかれる恋人の、最初の世代だ。」

まだスマホも普及がしておらず、インターネットやケータイがやっと当たり前になってきた時代。

「ほしのこえ」は、携帯電話のメールをモチーフにしたSFロボットアニメです。

「タルシアン」と呼ばれる異生命体を調査するため、国連軍の選抜メンバーに選ばれた「中学生のミカコと地球に残ったノボル」の物語。

「ほしのこえ」ネタバレあり!のあらすじ紹介!

本章では、「ほしのこえ」のあらすじを紹介します。
ネタバレありで紹介していきます。まだ観ていない方は注意してください。

物語の設定と2046年の日本に生きるミカコとノボル

ほしのこえ
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近未来の世界、2039年。
宇宙への有人探査が現実になった世の中―。

火星へと向かった有人探査チームが、異なる文明の遺跡を発見。
しかし、未確認の異生命体-タルシアン-に全滅させられるという衝撃的な出来事が起きます。

タルシアンは人類をしのぐほどのテクノロジーを有していました。
そしてタルシアンの遺跡は、ワープポイントであり、宇宙に複数存在していることも判明します。

2039年の段階では、タルシアンのテクノロジーを発見することによって、人類は科学的に大きな進歩を果たし、恒星間を航行することができるようになりました。

その7年後の2046年。
本作の主人公である長峰美加子(以下、ミカコ)と寺尾昇(以下、ノボル)は、関東の中学校に通っています。

部活も同じで、仲の良い2人は淡い恋をしていますが、まだ相手には言えません。
いつまでも続いてほしかった2人の関係は、突然の終了を宣告されます。

なんとミカコが国連軍の選抜メンバーに選ばれたのです。

国連宇宙軍は、戦艦を4隻建造し、世界から1000名以上を選抜。
調査団を作る計画を持っていました。

これはもちろん、人類の科学的進歩を促進したタルシアンの遺跡を調査するためです。

2047年、2人の関係は続きながら、ズレていく

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翌年の2047年。
ミカコは国連宇宙軍の調査に参加するため、地球から旅立っていきましたが、ノボルは普通の高校生として日常を過ごしています。

一応、連絡は取れていました。
携帯メールのように連絡を取り合うことができる「超長距離メールサービス」があったから。

しかし、それが満足に機能したのも最初のうちだけです。

ミカコが搭乗するリシテア号が地球から遠く離れていくにつれて、メールが到達する時間がどんどん離れていってしまいました。

ミカコの所属するリシテア艦隊は、何も調査の成果が得られないまま半年が経ち、冥王星軌道に接近します。

「地球に帰って、ノボルとの楽しい日々をまた過ごしたい」
そんなミカコの願いはメールでノボルに送信されますが、運命は残酷。

タルシアンがリシテア艦隊と遭遇してしまったのです。
タルシアンとの戦闘状態に陥ったリシテア艦隊。

ミカコもトレーサーと呼ばれる人型機動兵器。
いわゆるガンダムのようなロボットでタルシアンと戦います。

しかし、やはり力はタルシアンの方が上です。

テクノロジーの差が歴然としていました。
リシテア艦隊はタルシアンとの戦闘から撤退するため、タルシアンのテクノロジーを応用した技術でワープします。

ミカコはなんとか命拾いをしましたが、時間のずれが生じていたメールの到達時間は、さらに1年も開いてしまいました。

そして、司令部から届いた指令が、ミカコを絶望に突き落とします。
「さらに8.6光年先のシリウス星系まで行け。ただし、帰りのワープ地点は見つかっていない」

ノボルの決意

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ミカコとのやりとりを楽しみにしていたノボルですが、ミカコからのメールは届きませんでした。

メールが来ないことにいら立ちを隠せなかったノボルは、いつしか待つことをやめてしまいます。

しかし、雨が降るバス停で雨宿りをしているするノボルに、ミカコからのメールが届きました。

「ねえ、私たちは、宇宙と地上にひきさかれる、恋人みたいだね。」

宇宙空間という広大な空間がもたらす時間差に引き裂かれた、悲劇的な2人の関係。

ノボルはミカコを思い出し、一人でも生きていけるような強い人間になるという決意を強くしたのでした。

そして2056年

それから8年半が経ちました。

2056年、24歳になったノボルは、15歳のミカコからのメールを受け取りました。

ミカコはシリウス星系に無事到着し、第四惑星のアガルタというところで調査を開始していました。

「24歳になったノボルくん、こんにちは! 私は15歳のミカコだよ。ね、わたしはいまでもノボルくんのこと、すごくすごく好きだよ」

メールを送ったミカコのもとに、タルシアンが再度出現します。

今度は以前遭遇した時をはるかにしのぐ、多くのタルシアンの一群でした。
ミカコは艦隊を守ろうと必死に応戦しますが、そこに現れたのは巨大タルシアン。

死闘を繰り広げたミカコは瀕死の重傷を負いつつも、撃退に成功しました。

一方、ノボルに宛てた15歳のミカコからのメールは、「24歳になったノボルくん、こんにちは!私は15歳のミカコだよ。」という部分以外、ノボルには届いていません。

しかし、ミカコの想いは届いていました。
ノボルは、国連宇宙軍の艦隊で勤務し、ミカコに会いに行こうと決意を固めたのでした。
ミカコとノボルは知っています、2人は想い合っていることを。
2人は夢見ます、2人の再会を・・・

ラストを考察!ミカコは死んだの?

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(C) 新海誠 / Comix Wave
映画版のラストでは、2人の想い合う姿が描かれたまま、「ミカコが死んでしまったのか?」という点がわかりません。

はたして、ミカコは死んでしまったのでしょうか。

明確に結末が描かれているのは、SF作家の大場惑さんによる小説版「ほしのこえ The voices of a distant star」です。

しかし、実は映画でも、15歳のミカコからメールを受け取ったノボルの部屋にある新聞に、「帰還の可能性はリシテア号一隻か」と掲載されています。

また、SF作家の大場惑さんによる小説では、ミカコが生きているところが描かれ、その後リシテア号が地球へと向かっている描写があります。

その後、艦隊勤務となったノボルがリシテア号の救助艦に搭乗し、救助艦内で2人は夢に見た再会を果たします。

ここまではっきりと描いてしまうのには賛否があるかと思いますが、「どちらからもミカコが生きている」ということがわかります。

「ほしのこえ」の小説の紹介!その他メディアミックスも!

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(C) 新海誠 / Comix Wave

先ほど大場惑さんの小説に言及しましたが、「ほしのこえ」は、今や主流となったメディアミックスアニメとしても成功しています。

さまざまな媒体で作品が製作されました。映画以外の作品は、4つ存在します。

小説が2作とマンガが1作、ドラマCD1作、そして舞台として1作です。

それぞれ見ていきましょう。

小説版「ほしのこえ」

小説版「ほしのこえ」は2作存在します。

SF作家大場惑さんの小説「ほしのこえ The voices of a distant star」は、2002年に出版されました。

最初は、メディアファクトリーのMF文庫Jから、その後、MF文庫ダ・ヴィンチ、角川文庫、角川つばさ文庫からも発売されました。

もう一つの小説は、新海誠監督の映画作品のノベライズを5つも担当している加納新太さんの小説「ほしのこえ あいのことば / ほしをこえる」です。

新海誠監督のパートナーと呼ぶべき加納新太さんの小説は、大場惑さんのものよりも、より新海誠ワールドを伝えていると言えるでしょう。

そして、ミカコとノボルのそれぞれの立場が映画より細かく描かれています。

「ほしのこえ」のその他メディアミックス!

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小説以外にもさまざまな作品が本作から生まれました。

まずは、マンガです。

2009年にドラマ化もされた、マンガ「マイガール」の作者としても有名な佐原ミズさんが作画したコミックが、講談社アフタヌーンKCから2005年に出版されました。
» ほしのこえ (KCデラックス)

「ほしのこえ」はドラマCD化もされました。
計54分の7トラックで収録。

パイオニアLDCから2002年に発売された本作では、声優の武藤寿美さん、ゆかなさん、山本麻里安さん、野島健児さん、鈴木千尋さん、関智一さんが参加しています。

舞台では、2015年に劇団ユニットキャットミント隊が「朗読×劇」という新しいスタイルでの上演をしました。

ミカコ役・ノボル役はそれぞれトリプルキャストです。

女優の小松未可子さん、アイドルの根岸愛さん、元モーニング娘。の新垣里沙さんが演じています。

小松未可子さんも元アイドルなので、ミカコ役はアイドルの方が演じた形です。

そしてノボル役は、俳優の井上正大さん、河原田巧也さん、声優の梅原裕一郎さんが演じています。

「ほしのこえ」の声優(キャスト)一覧

役名声優
長峰美加子(ながみねみかこ)篠原美香(しのはらみか)
寺尾昇(てらおのぼる)新海誠(しんかいまこと)
リシテア艦オペレーターDonna Burke(どなばーく)

「ほしのこえ」の監督・音楽・スタッフ一覧

監督・脚本・映像・制作新海誠
音楽天門
制作・配給コミックス・ウェーブ
ホームページ公式ページ

「ほしのこえ」の考察・評価・レビュー

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「ほしのこえ」は、制作のほぼすべてを新海誠監督が担当しています。

また、往年のロボットアニメ「機動戦士ガンダム」や「新世紀エヴァンゲリオン」に似た設定です。

1人の人間だけであのような壮大な世界を創造したということは、やはり素晴らしい才能と言わざるを得ません。

新海誠監督が得意とする「ズレ」を描いた作品

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新海誠監督は、SF的な設定を得意としているから来るものでもありますが、「ズレ」を描くのが得意な作家であると言えます。

時間や時空の「ズレ」は、それぞれの作品の設定で考えられており、大ヒットした「君の名は。」でも、タキとミツハの時間が「ズレ」ています。

本作は、いつでも送れる携帯メールという当時最先端の機能を逆に利用し、「いつでも届くはずのメールが届かない」という演出でドラマの効果を高めています。

「ほしのこえ」の評価

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(C) 新海誠 / Comix Wave

「ほしのこえ」は、総じて素晴らしい作品と言えます。

25分という短い作品でありながら、壮大な世界観を伝え、登場人物の葛藤を描き出すことに成功しています。

ただし、ほぼすべて自分で制作しており、メジャーデビュー作でもあるため、作画の粗さは目につきます。

しかし、それはその後の新海誠監督の作品を考えれば、たいしたことではありません。

興味深い世界観を構想したこと、1人でここまでのものを作り切ったこと。

本作の評価には直接関係ありませんが、その後の作品につながるモチーフが本作に集約されているということは、「ほしのこえ」の評価を押し上げるものでもあるのです。

今や日本を代表するアニメ監督になった新海誠監督。
デビュー作でも、そうなるであろうということは、すでに予想されていました。

今では色あせたように見え、監督自身が封印したい作品と言っていますが、「ほしのこえ」がなければ、今の新海誠はいないのではないでしょうか。

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