
2007年に公開された『秒速5センチメートル』。
新海誠監督による、第3作目の劇場公開作品です。
この記事では、『秒速5センチメートル』の作品紹介をしていきます。
- 映画のあらすじや概要
(ネタバレなしで読むならこちら) - ネタバレ解説
(ネタバレありで読むならこちら) - 各場面における考察
(考察を読むならこちら) - 声優(キャスト)紹介
(声優・キャストはこちら)
新海監督のヒット作『君の名は。』が250億円という興行収入に対し、『秒速5センチメートル』は1億と規模が小さくなっています。
新海映画の中でも「評判・感想」が分かれる本作品。
『君の名は。』以上に評価する人がいるほどの隠れた名作です。
本記事で、その魅力に触れてみてください。
[caption id="attachment_8309" align="aligncenter" width="640"] (C)2007『秒速5センチメートル』製作委員会[/caption]新海誠監督の第3作目となる劇場アニメ『[…]
映画『秒速5センチメートル』の作品概要

新海誠監督の『秒速5センチメートル』は2007年3月3日に公開された作品です。今作では遠距離恋愛を描いています。
距離感で言えば『君の名は。』に通じる部分はありますが、『君の名は。』と違って特別な設定は一切ありません。
ただ、新海監督の手が加われば日常が幻想的な世界に変わります。
新海ワールドの真骨頂とも言える「作画やBGMだけでも見れてしまいそうな芸術性」が本作品にもあります。
同時に胸が苦しくなる作品でもあり、「感想・評価」は賛否両論です。儚い恋愛経験のある人には刺さるらしく、絶賛されていました。
公開日 | 2007年3月3日 |
---|---|
上映時間 | 1時間3分 |
興行収入 | 1億円 |
監督 | 新海誠 |
音楽 | 天門 |
主題歌 | 山崎まさよし |
関連作品 | 新海監督・映画作品一覧 |
キャスト | 近藤好美 水橋研二 花村怜美 |
予告動画 (YouTube) | 『秒速5センチメートル』予告編 |
公式サイト | 『秒速5センチメートル』公式 |
動画配信 サービス | 『秒速5センチメートル』を無料で動画フル視聴 |
映画『秒速5センチメートル』の見どころ※ネタバレなし
第1部に当たる「桜花抄(おうかしょう)」は、小学生の時からスタートします。貴樹とヒロイン・篠原明里の出会いと親の転勤による別れ、そして中学生になってからの再開が丹念に描かれます。
夜の駅舎で2人が再開する場面は、風景の美しさも相まって忘れがたいシーンになっています。
香苗は貴樹に惹かれますが、告白はできていません。注目すべき点は、この「コスモナウト」のラストで流れる香苗のモノローグ。
その香苗のセリフは、実は貴樹の篠原明里に対する想いとまったく同じもの。相手が違えど、2人は同じ気持ちを抱いているのです。香苗のモノローグは、そのまま第3部における貴樹の心情になっていきます。
映画のタイトルにもなっている「秒速5センチメートル」とは、「桜の花の落ちるスピード」と劇中で説明があります。桜の花びらが舞い落ちているシチュエーションで、2人はすれ違うのです。
線路を渡り切って貴樹は振り返りますが、ちょうど列車が通過して、明里の反応は見えません。そこから社会人になった貴樹の回想シーンが始まります。
明里が振り返っているのかどうか、視聴者はラストシーンまで興味を持ち続ける構成になっています。
映画『秒速5センチメートル』のあらすじ(ネタバレあり)を解説!
それでは『秒速5センチメートル』のあらすじを紹介します。
ネタバレ紹介となりますので、まだ観てない方はご注意ください。
『秒速5センチメートル』では、三部作が一つの作品になっていて、違う時間軸と環境で物語が展開していきます。
時系列順にすべての話が繋がっているので、構成がわかりやすいです。
第一話 桜花抄(おうかしょう)
第一話の桜花抄(おうかしょう)では、貴樹と明里の小学生時代から貴樹が中二で種子島へ転校していく前まで描かれています。
中学一年生の貴樹が転校先の明里へ会うために、電車へ乗る場面が大部分を占めていました。電車内では貴樹の回想を挟み、貴樹と明里の出会いや関係性がよくわかる内容です。
中学生の少年に理不尽が訪れ、雪の降る寒さと合わさって、見ている人をも心細くさせてしまいます。貴樹は無事、明里の元へたどり着けるのでしょうか。
明里が転校し貴樹との文通が始まる

「来年も一緒に桜、見れるといいね。」と明里がいうと電車が視界を塞ぎます。小学校の卒業式を機に、明里は親の都合で貴樹のいる東京から栃木へ旅立っていきました。
それから半年後、「私の事、覚えていますか?」と中学生活を送る貴樹に明里は手紙を出します。まだ携帯もない時代です。貴樹も明里への手紙を書き、遠距離での文通が始まりました。
貴樹もまた、親の事情で引っ越しを繰り返しています。三学期が終わると貴樹は種子島へ行くことが決まってました。
そうなると明里とはなかなか会えない距離まで引きはがされてしまいます。
明里と貴樹が別れてから一年が過ぎ、>貴樹は東京から離れる直前、栃木にいる明里に会う事となりました。
栃木にいる明里へ会いに行く貴樹

貴樹が転校した学校に、一年後に明里が転校してきます。二人とも体は小さく、病弱ということもあり、図書館で同じ本を読み合う仲でした。
境遇の似ている二人は自然と仲良くなり、貴樹は明里とずっといられると思っていました。
明里との再会を前に不運が次々と貴樹を襲う!?

久しぶりの再会にもかかわらず、後続列車遅延のため、貴樹の乗る電車は長い間停車します。
貴樹は車内に閉じ込められたまま、明里との約束の時間は過ぎていきました。明里に渡すために、貴樹は出会いに行くまでの二週間で書いた手紙を持っています。
貴樹には明里に伝えたい事が沢山ありました。
しかし、無情にも手紙すら風に飛ばされてしまいます。
更に電車は降雪によって二時間も停車。時間は悪意を持つかのように流れ、貴樹を悲しみの淵に追い込んでいきます。
約束の時間からずいぶんと過ぎていきました。落胆して俯く貴樹が電車を降りると、待合室には明里がいます。
二人は桜の木の下まで歩いていくと、キスをしました。その瞬間に貴樹は明里といられないと悟ります。
畑の脇にあった納屋で貴樹と明里は語り明かし、翌朝に別れを告げます。貴樹はなくした手紙の事を話さず、明里も貴樹に渡すはずの手紙を渡さないでいました。
第二話 コスモナウト
第二話のコスモナウトは明里と栃木で再会した後の貴樹が、種子島へ転校した先の物語。
ちなみにコスモナウトとは、宇宙飛行士という意味です。孤独な旅を続ける貴樹になぞらえてるといったところでしょうか。
新たなヒロインとして花苗が登場します。「心ここにあらず」といった貴樹に恋する花苗視点で貴樹を描かれているのが新鮮です。
種子島へ転校してきた貴樹に片思いするクラスメイト

貴樹が転校した日から、貴樹に片思いする花苗というクラスメイトがいます。
花苗は卒業後の進路が決まらず、趣味とするサーフィンも波に乗れずにいました。貴樹と花苗は付き合ってはいませんが、度々一緒に帰る仲です。
花苗は、一方的に貴樹への思いが募ります。貴樹を見る度に幸せを感じる花苗ですが、同時に貴樹が花苗を見ていない悲しみがありました。
ある日の貴樹と花苗が帰る途中、二人は貨物列車がロケットを打ち上げ場まで運ぶのを目にします。
その後、貴樹は孤独に宇宙を旅するロケットに思いを馳せると、夢をみました。貴樹の隣にいる顔の見えない女性と、異星の地でどこまでも続く銀河を眺めています。
貴樹への告白を決めた花苗の末路

夏が過ぎ、気持ちの整理がついた花苗は貴樹への告白を決めました。
ただ、花苗ではない遠くを見ている貴樹に気づいてしまいます。
告白を諦めた花苗は泣くしかありません。そんな時、ロケットが打ちあがり、二人はじっと眺めていました。
花苗は自分に興味がない貴樹を自覚し、届かないような遠くを見つめる貴樹の気持ちを分かった気がします。
そして、貴樹の夢で隣にいた女性が明里だと発覚しました。その夜、花苗は貴樹と結ばれませんが、この先も貴樹を好きでい続けるであろう事に涙します。
第三話 秒速5センチメートル
大人になって東京に戻った貴樹と明里の行く末がわかります。
貴樹がどのような生活をして、明里は何をしているのか。二人の行く末が明らかになる衝撃のクライマックスです。
そして、第三話にして出てきたのが今作のタイトル。秒速5センチメートルは桜の落ちるスピードですが、なにを表しているのでしょうか。
成人した貴樹は日々潤いをなくしていく

踏切を渡り切ると貴樹と女性は振り返ろうとしますが、タイミングが悪く電車に遮られます。とある夜の帰り道、貴樹の携帯に水野という交際相手から電話が鳴ります。
しかし、貴樹はその電話に出ませんでした。
一方で、明里は貴樹ではない男性との結婚式を控えています。貴樹は久しぶりに水野からメールを受け取ると、別れを告げられます。
水野はいまも貴樹を好きですが、貴樹は水野に歩み寄ろうとしませんでした。それでも貴樹は、明里への思いに囚われながらも前に進もうとしています。
ただ、貴樹の心は日々潤いを失っていきました。ある朝、限界を感じた貴樹は仕事を辞めます。
その後、明里と貴樹は同じ夢を見ました。夢の中、栃木で再会した13歳の貴樹と明里は、新雪の上を二人だけで歩いています。
いつか一緒に桜を見る事ができると、貴樹と明里は何の迷いもなく思っていました。
『秒速5センチメートル』の感想
思春期の淡い思い出に焦点を当てたストーリー、美しい風景などが評判だった新海作品。この『秒速5センチメートル』で、それらが1つの頂点に到達した感があります。
「男のセンチメンタル」を前面に押し出し、本作ではそれ故の繊細さや儚さといったものを獲得しました。計60分という短い時間の中に、1~3部どれもが過不足なく描かれています。
そのストーリーを画面に定着させた、作画監督・キャラクターデザインの西村貴世さん。美術の丹治匠さんと馬島亮子さんをはじめとするスタッフ陣の力量も、評価されるべき作品です。
雪が降るシーンや、探査衛星が打ちあがっていく夕暮れの空、作品の重要なテーマにもなっている花びらが散る様子などは必見です。
関連・類似作品との比較や共通点
『秒速5センチメートル』には、前2作の新海作品とは違う点がいくつかあります。
まずは、最初に触れた通りオムニバス形式の作品であること。
もう1つは、SF要素が全くないこと。
『ほしのこえ』は未来の日本が舞台であり、『雲のむこう、約束の場所』は、現実と違う架空の地球が舞台でした。SF的小道具もたくさん出ています。
しかし『秒速5センチメートル』には、それらのSF的設定はありません。
その狙いについて新海監督は、自身のホームページで「観終わった後に、見慣れた風景がいつもより輝いて見えるような、そんな日常によりそった作品を目指しています」と語っています。
【秒速5センチメートルの考察】桜と雪の降り始めは貴樹の別れを意味している!?
秒速5センチメートルには、桜と雪が落ちてくる場面を何度も描写されています。
桜と雪の場面を見る度に、筆者はどこか寂しいような懐かしい感覚に陥りました。
何度も見返してみたところ、貴樹の別れを示唆しているのではないかと気づきます。
また、明里は桜を「まるで雪みたいじゃない?」と言い表していました。
更に冬の桜の下では、花びらがない代わりに雪を桜になぞらえ「まるで雪みたいじゃない?」と、明里は同じセリフを繰り返してます。
そこで、雪は桜と同じ役割を持っていると考えられます。
ちなみに桜の花言葉は「精神美、優雅な女性、純潔」です。秒速5センチメートルの雰囲気にぴったりですね。
それでは、桜と雪の降り始めのシーンを時系列順に振り返ってみましょう。
開幕から桜が映し出される場面

貴樹と明里が小学生の頃です。卒業と同時に明里は転校していきます。
その帰り道、明里は貴樹を置き去りに、桜が咲き乱れる踏切まで走りだして行きました。
貴樹が栃木の明里に会いに行くと

その瞬間に貴樹は、明里とずっといられる事ができないと悟ります。日が昇ると貴樹は東京へ帰っていき、二人が直接言葉を交わしたのはこれで最後となります。
大人となった貴樹の部屋に桜の花びらが入る

貴樹と明里が振り返ろうとした瞬間、電車に阻まれてしまいます。電車が通過した後に明里はいませんでした。
水野との別れに雪が振り始める
貴樹の交際相手の水野が最後に電話した時、貴樹は着信を無視しています。
直後に降り始めたのがこれまた雪でした。間もなく貴樹と水野は別れます。
明里は貴樹以外の男性との結婚式を控えていた
ここでもわずかに雪が降っています。
ただ、唯一雪の降り始めかは確認できません。
最後の雪の降り始めはエンディング直前です。貴樹と明里が幼い頃に再会できると確信していた時の夢でした。
「そう思っていた」と過去形で二人は夢を否定します。
貴樹は明里に優しくしながらも心は上の空でした。そもそも二人はくっついてさえいません。桜と雪は貴樹にとっての別れを意味しているのがわかります。
【ネタバレ】小説版を読むと印象が全然違う!?思ったよりバッドエンドではない
小説版の『秒速5センチメートル』は、映画で描かれなかった「貴樹の大学時代」「仕事を辞めた経緯」がわかります。
映画だけを見ると貴樹が気の毒なだけの人間に思えますが、貴樹はそこそこの人生を歩んでいるのがわかりました。
決して明里一筋という訳でもなく、複数人の女性と付き合いを重ねています。結末に後味の悪さを感じてる方は、ぜひ読んでみる事をおすすめします。
では、どうして映画では偏った印象が残ってしまったのか?
その元凶は手紙の内容です。映画内で貴樹と明里は手紙を渡さず、内容もわからないままでした。
小説版ではきっちりとその内容が書かれています。貴樹も明里も最後に出会ったのを機に別れる事を手紙に書いてるんですね。
貴樹は手紙を紛失してしまったので仕方ないですが、明里が渡さなかったのはなぜなのか?それは桜の木の下でキスをした時です。
あの時に二人とも世界が変わってしまいました。とはいえお互いに割り切った生活をしているのがわかります。
それでも貴樹と明里が相思相愛なのは変わりありません。
また、踏み切りで貴樹と明里らしき人物が振り返った場面ではしっかりと目が合っていました。
それでも貴樹は過去に囚われず、前に進もうとする意志を持っています。興が醒めたような安心するような。
映画では「意地悪なとこだけを抜粋しているんだな」と感じましたが、小説版にはない陶酔感があるので、それはそれでいいのではないでしょうか。
『秒速5センチメートル』の声優(キャスト)一覧
本作の主な登場人物は、篠原明里(しのはらあかり)さん、遠野貴樹(とおのたかき)さん、澄田花苗(すみだかなえ)さんの3人。
それぞれの役どころと、本人たちのコメントを紹介していきます。
篠原明里(しのはらあかり)・近藤好美(こんどうよしみ)

当時は声優として全くの未経験でしたが、新海監督に声質を絶賛されています。
無名で声優を起用する監督といえば、ジブリの宮崎駿さんが有名です。
宮崎さんいわく、プロだとしっかりと役を作れてしまうので、それが嘘っぽく感じてしまうのだとか。
今作はまさにその言葉通り、好美さんは明里のハマり役でした。好美さんの演じる明里は、助けたくなるような弱々しさと可愛さを合わせ持っています。
不安を抱える少女らしい素人さが生々しく、アニメの中に生身の人間がいるようでした。
近藤好美さんのコメント
脚本を読んで、一気にスッとその世界に入ってしまいました。
せつなさもあって、その中で日常のよくある風景や場面がきらきらと描かれていて。私、個人的に桜がすごく好きなんですよ。
なので(第1話の)タイトルもすごく素敵だなと思いました。
出典:『秒速5センチメートル』公式ページより
遠野貴樹(とおのたかき)・水橋研二(みずはしけんじ)

遠野貴樹(とおのたかき)役の水橋研二(みずはしけんじ)さんは、俳優として活躍しています。
声優としての活躍は初めてだそうで、自分の声を聴いた時は恥ずかしかったとか。
水橋さんは少年のような若々しい声をしていました。貴樹に物凄い共感があったと言います。
伝えたくても伝えられなかったり、優しく女性を傷つける言葉だったり。思春期の貴樹の不器用さを演じる上で生かされてると感じました。
水橋研二さんのコメント
新海監督とお会いして、びっくりしたんですよ。
作品を先に見ていたんですが、お会いして納得と言うか、作品とのギャップがまったくなかったので。監督の書く言葉って、嘘がないんですよね。文章的な言葉でもその裏に飾ってない本当があって、誰もが共感できる。
出典:『秒速5センチメートル』公式ページより
澄田花苗(すみだかなえ)・花村怜美(はなむらさとみ)

花村さんは声優や女優をしています。花苗はクラスにいそうなありきたりな女の子です。
花苗が自分を犬に例えているように、貴樹にぞっこんな一面は、真っすぐで純粋なかわいらしさがありました。中学2年の時から高校3年まで、思いを伝えられずにもがいていましたね。
わざわざ貴樹と同じ高校を猛勉強して受かったのに、けっきょく思いを引きずっています。内心応援していました。
なので、最後まで告白できない場面には胸が締め付けられます。よく花苗と二人きりで帰っていた貴樹も、花苗の気持ちに気付いていたと思うんです。
明里に出会えない心の隙間を埋めるように登場した悲しいキャラクターでした。あまりのバットエンドに悶絶する人には、漫画版も読んでみるのをおすすめします。
花村怜美さんのコメント
みんなが懐かしさを覚えるお話が新海監督の描かれる美しい景色と一緒になると、すごく新鮮で瑞々(みずみず)しいものになるんですよね。
私のお気に入りのシーンは、カナエが草原で風に吹かれるシーン。
どのお話でも風が吹いていて、それがせつないけれど気持ちいい風なんです。
出典:『秒速5センチメートル』公式ページより
監督・脚本・制作総指揮は新海誠さん

新海誠さんはジブリの宮崎監督に続き、国内では2人目となる興行収入100億円を突破したアニメーション監督。
今作は作品のほとんどを新海監督が作業し、没入感のある世界観に引き込む力が強烈でした。
思春期の描写が等身大の少年そのもので、若い繊細な感性を持ち続けている人だと感じます。
大人になった貴樹はみずみずしい心を失いました。
そのように、視聴者が忘れていたかつての記憶を新海監督の作品は呼び覚ましてくれます。
新海誠監督のコメント
我々の日常には波瀾(はらん)に満ちたドラマも劇的な変節も突然の天啓もほとんどありませんが、それでも結局のところ、世界は生き続けるに足る滋味や美しさをそこここに湛(たた)えています。
出典:『秒速5センチメートル』ホームページより
主題歌は山崎まさよしさん
アコースティックギターで山崎まさよしが弾き語っています。
ギターの優しい音色に、山崎まさよしさんの声と歌詞が何とも言えない哀愁をただよわせていますね。
叶わなかった初恋の相手を彷彿とさせられます。物事がうまくいかない『秒速5センチメートル』の世界観らしい曲です。
『秒速5センチメートル』の総合評価
こんなにも心苦しくなるアニメーションは、よい意味で観た事がありません。モヤモヤが嫌いな人には向いてませんが、忘れていた思春期を思い返したい人にはおすすめです。
学生時代といえば、苦い思い出の一つや二つあるのではないでしょうか。もう二度と取り戻す事ができない時代を、嫌というほど思い出します。
無力さと襲い掛かる厳しい現実に挟まれる思春期は、心配事を色々と考えてしまう時期です。
しかし、不安に潰されそうな貴樹を取り巻く景色は、皮肉なほどに綺麗でした。
未来が見えない影と、精一杯生きるしかない輝きが交差して、ただ美しいの一言です。