【ドイツの働き方】なぜ日本よりも生産性が高いのか?ドイツから学ぶ効率がいい働き方

ドイツの働き方

2019年から「働き方改革」が順次施行されている日本。

しかし、人材不足や長時間労働の問題がなかなか解決されず、「本当に改革が行われているのか?」実感できないのが現状ではないでしょうか。

2020年の現在、定時でしっかりと仕事を終えることや有給休暇取得率の向上、リモートワークを推奨する企業が増えてきたとはいえ、世界から見ればまだまだ改善が必要です。

そこで今回は、日本よりも「生産性」が高く、「年間休日」も多く、仕事のメリハリがしっかりできている“ドイツの働き方”について触れていきます。

「働き方」が見直されている2020年。これからの働き方の参考にしてみてください。

日本よりドイツの生産性が高い7つの理由

ドイツの働き方
現在、多くの先進国で「働き方」を見直すことがテーマになっています。

先進国のなかでも日本人は働きすぎと言われていますが、同じ先進国のドイツと比べたとき、年間平均労働時間の差はなんと317時間(日本が長い)。
(参考:世界の労働時間・国別ランキング・推移

しかし国内総生産はドイツに及びません。
人口もドイツより約1.5倍多いのに、なぜ生産性に「差」が出るのでしょうか。

それはドイツ人の仕事に対する「考え方」「働き方」に秘密があったのです。

ドイツの仕事に対する考え方
  1. 労働時間の徹底管理
  2. 労働時間の貯蓄制度
  3. 組織が限りなくフラット
  4. 有給が充実している
  5. 仕事に対しての効率性を重視する
  6. 個人のプライベートは犠牲にしない
  7. 個人の自立、独立意識が強い

上記の内容を順に解説してきます。

①労働時間の徹底管理

日本でも1日の労働時間は法律で決められていますが、ブラック企業というワードは現在も世間を騒がせており、改善はされていません。

しかしドイツの場合、1日10時間超える労働は法律で禁止されています。

もし、1日10時間以上の労働を従業員にさせてしまいそれが発覚すると、経営者にたいして最高で1,500ユーロ(日本円:225万円)の罰金、最悪な場合だと1年間の禁固刑を科せられます。

日本の労働環境からすると考えにくいことですよね。

また“閉店法”という法律がドイツにはあります。
例外のお店はあるものの、基本的に店舗は平日と土曜日の午後8時から午前6時は営業できません。

日曜日と祝日は終日営業ができず、ドイツでの労働は1日10時間未満に抑えなければいけません。

また、6か月間の平均労働時間は1日8時間以下にしなければならないルールも存在します。仕事が忙しい繁忙期でもこのルールは絶対に守らなければいけません。

しかし、ここでひとつ疑問が浮かびませんか?
1日10時間までは働いていいものの、6か月間平均で8時間以下にするのは不可能です。

実は労働時間を抑える方法がドイツにはあるんです。これについては下の項目で説明していきます。

②労働時間の貯蓄制度

日本ではまったく馴染みがないのですが、ドイツには「労働時間貯蓄制度」というものがあります。

3時間残業した場合、別の日に3時間早く帰ることができる制度です。

残業した時間を“貯蓄”することにより、「やるときはやる!帰るときは帰る!」となり、仕事にメリハリをつけられるのです。

この制度のおかげで、6か月間の平均労働時間は8時間を超えなくなります。

時間の制約があいまいな日本では、仕事に対してメリハリをつけられず、逆に生産性が下がっていることになっています。

私がとあるベンチャー企業で働いていたときも、毎日遅くまで働いている方がたくさんいました。
「労働時間の調整」という意味では、もっと柔軟な考え方が必要ではないでしょうか。

③組織が限りなくフラット

日本とドイツでは“組織”の考え方がまったく違い、簡単に言うと以下の形となっています。

  • 日本:役職=地位
  • ドイツ:役職=役割

日本では役職を地位と考えるため、「上司と部下」のように上下関係がはっきりと区切られてしまいます。

しかし、ドイツの場合は役職を役割と考えるため、相手が部長でも社長でも対等に物事を主張することができます。

縦社会色が強い日本において、個人に与えられる裁量権は少なく、仕事を進めるうえでいくつもの工程を踏みます。

上司の顔色をうかがいながら仕事をするため、効率的に仕事を進められないことも多いのではないでしょうか。

その点ドイツは上司の顔色をうかがう必要はなく、個々で仕事を効率的に進められるため、最終的に生産性が上がる仕組みとなっています。

④有給が充実している

ドイツでは年間休日が24日付与され、企業によっては30日のところもあります。

職業に例外はなく、医者やお店をやってる人もみな平等に付与されるため、3週間ほどのバケーションを楽しみます。

また、病気にかかった場合は有給を使う必要はなく、病気用の休暇が用意されているのも特徴です。

一方、日本の有給取得率は世界最下位。これは国民性が強く表れていると言われています。

日本の場合、「有給を取得することに罪悪感がある」というのが現状です。病気にかかった場合でも、よっぽど酷い症状でないかぎりは薬を飲んで出社してしまいます。

有給を使うタイミングは、「自分が楽しみたいときに使う」がモットーになっており、「病気で使うのはもったいない」という意識があるからだと思います。

⑤仕事に対しての効率性を重視する

日本人は、与えられた目の前の仕事をもくもくとこなしていきますが、ドイツはそもそも“仕事そのもの”を選びます。

というのも、仕事にたいして「労力・費用・成果・見返り」を総合的に比較して仕事をするのです。

「顧客は怒らないのか?」と思いますよね。
しかし、ドイツの場合は納得する人が多いと言います。

仕事を受ける側もお願いする側も、常に「費用対効果のバランス」を考えながら仕事をしているのです。

仕事にかける手間を最小限に抑え、効果は最大限にすることを最優先に考える。
結果として、それが高い生産性を生み出しているサイクルとなっています。

⑥個人のプライベートは犠牲にしない

ドイツでは“仕事のためにプライベートは犠牲にしない”という考え方があります。
これは労働時間管理の徹底にもつながる話です。

仕事は労働時間内で終わらせる意識が強いため、限られた時間の中で自身が持っているポテンシャルを発揮する努力を惜しみません。

完全に割り切った考え方のため、生産性が上がるのかもしれません。日本では、仕事が理由で“参加できないプライベートの予定”も多いかと思います。
(クライアントや上司とのやり取りで、スケジュールがうまく進まないなど)

これは「職場の空気」にも影響されますが、個人に強く根付いている「仕事へのあり方」が原因ではないでしょうか。

⑦個人の自立、独立意識が強い

日本とドイツでは自立・独立意識がまったく違います。
この理由として“教育”が違うことがあげられます。

ドイツの小学校は4年制となり、10歳になるまでに自身の進路を決めなければいけません。
以下は進路の例です。

  • 基幹学校(5年制or6年制) ⇒ 職業訓練コース
  • 実科学校(6年制) ⇒ 職業専門学校or上級専門学校
  • 中高一貫校(9年制)で大学入学資格取得 ⇒ 大学

10歳でこれら3つのコースから1つ選択します。
ドイツの自立性や独立意識が強い背景には、“自分のことは自分で決める”という小さい頃からの大きな選択があるからこそだと思います。

日本では、基本的に中学校までを義務教育として、それ以降は「高校・専門学校・大学」に行ってから就職となるので、ドイツと比べると「選択のタイミングが遅い」ということがわかります。

日本におけるこれからの働き方

ドイツの働き方
日本が働き方を本気で変えるためには、3つのことを変えていく必要があります。

  1. 国が法律を整備
  2. 企業が働く環境を整える
  3. 個人の意識変化

すべては難しいにしろ、ドイツを参考にすべきところもあります。
例えば「⑥個人のプライベートは犠牲にしない」という点では、意識さえ変えられれば実行していける内容です。

「①労働時間の徹底管理」は、形は違うにしろリモートワークやテレワークを導入している企業も増え、少しずつですが「働き方」が変化しているのではないでしょうか。

2010年前後と比較しても、「リモートワーク」「副業」がOKな求人情報を見るようになりました。

また、「クラウドソーシング」や「フリーランスのエージェント」も増え、個人で働く選択肢も増えています。これからの10年は、さらに日本人の働き方が大きく変わっていくのではないでしょうか。